クリエイティブ領域におけるAI活用

AIのニュースを見ない日は無いぐらい大きな流れになっているAIですが、受託のクリエイティブ領域で活用する場合、様々な課題があります。使いたいけどどう使えばいいのかわからない、使っていいのかわからないという人も多いと思います。

私たちも様々な課題に直面しながら、AIツールを色々と試し、少しずつ実案件でも使い始めています。クリエイティブ領域でデザイナーが実際に試したもの、実案件で使ったものを中心に紹介します。

AI活用における権利問題とクライアント合意

案件でAIを利用する場合、権利と、クライアントとどう合意するかが最初のハードルです。

AIツールを活用する際は、各ツールの商用利用ライセンスを必ず確認し、著作権や肖像権の問題がないことを事前に確認する必要があります。

AIツールの商用利用ライセンス

生成されたデータを商用利用可能かどうかを確認しましょう。

Google Gemini

Google Gemini で生成された画像は、以下の条件で商用利用が可能です

広告利用含む商業利用でNano Bananaを利用する場合は、Google Workspace with Gemini もしくは Vertex AI をご利用ください。

https://note.com/google_gemini/n/n1afcbf4d5275

無料版のGeminiで生成した画像は商業利用ができません。

Adobe Firefly

一般に、生成AI機能からの出力は商業的に使用できます。ただし、アドビが生成AI機能のベータ版を商用利用できないと製品またはその他の場所で指定した場合、そのベータ版機能から生成された出力は個人使用のみを目的としており、商用利用することはできません。

https://www.adobe.com/jp/legal/licenses-terms/adobe-gen-ai-user-guidelines.html

と規定されています。各アプリケーションのベータ版で生成したものは商用利用できないので注意が必要です。

インプットしたデータがモデルの学習に使われるかどうか

クライアントのデータをAIに入力する場合、そのデータが学習に使われるリスクを検討する必要があります。

各個人のアカウントの設定、契約全体での設定などアプリケーションによって設定方法が違います。 プランによってデフォルトが学習に利用する設定になっていたり、学習に利用しないという設定ができない場合もあります。

契約全体でコントロールできる場合、正しく設定することでリスクをコントロールできます。 個別の設定の場合事前にしっかりとルールを検討し周知しておきましょう。

モデルの学習にどんなデータが使われているか

Iがどんなデータを元に学習されているかも確認する必要があります。特に画像をテキストから生成する場合、慎重に検討してください。

アウトプットした画像のみを見て著作権の問題があるかどうかを判断することは非常に難しいため、画像生成プロセスで著作権を侵害する可能性が無いことを担保できることはとても重要です。

Adobe Firefly はその点で一定の安心材料を持っています。Adobe Stockの画像やオープンライセンスコンテンツ、その他著作権が失効したパブリックドメインコンテンツのみから学習を行っていると公式に表明されています。

安全な商用利用を可能にするための取り組みの一環として、最初のFireflyモデルのトレーニングには、Adobe Stockのライセンス済み画像と著作権の切れた一般コンテンツを使用しています。 

https://www.adobe.com/jp/products/firefly.html

とはいえ数%問題がある画像が学習に含まれている可能性があるとも言われているので、最終アウトプットに問題が無いかは別途確認しましょう。

クライアントとの合意形成

AI生成コンテンツを使用する場合は、必ずクライアントとの事前合意が必要です。透明性を保ち、リスクを最小化することが重要です。

AIのアウトプットのクオリティが上がってきています。ぱっと見ただけではAIの出力であることがわからないレベルの場合もあります。クライアントは、「これならいいんじゃない?」と思うかもしれません。

しかし、一部のAI生成画像には検出可能な特徴があったり、AIで解析することでAI生成と判別できたりする可能性があります。そのため、「利用者や見た人がAIを使っているとわかっても良い」という確認を取ることが重要です。

特にクリエイティブ領域でのAI利用を好ましく思わない方もいるので総合的に判断する必要があります。

 

では実際の事例をみていきましょう。

実際の案件で使ったパターンですが、そのままは出せないので当社スタッフや素材の写真を利用して再現しています。

0から生成する

前述したように、権利関係の問題が想定されるため、かなり限定的な利用のみ行っています。

人物

プロンプト

日本の一般的なビジネスマンの全身写真。清潔感があり、親しみやすく、誰にでも好かれる笑顔。モデルのような派手さはなく、真面目な会社員。紺色の標準的なスーツとネクタイ、革靴を着用。直立してカメラを見ている。背景は完全に無地の白(切り抜き用)。高画質、実写スタイル、スタジオ照明。

希望する人物を詳細に指定します。背景は別途用意して後から合成するほうがいいかもしれません。

素材

単体で利用するのではなく、組み合わせて利用するための素材の生成です。

プロンプト

デッサン用の木製関節人形(ポーズ人形)が両手で膝を抱えて座っている、引きの全体写真。人形の全身がフレーム内に完全に収まっており、どこも切れていない。周囲には余白がある。自然光。

人物のポーズ素材です。用意した写真を利用することもできますが、アウトプットが写っているものに引っ張られてしまうので、シンプルなものを用意します。

何も身に着けて居ない、服を着ていないなどと指定するとフィルタされてしまうので、木の人形という指定をしてフィルタを回避しています。

手書きで棒人間書ける人はそのほうが早いと思います。

プロンプト

フォトリアリスティックな平置き、マネキンなし。男性ストリート衣装(濃いネイビーブルー/ボルドー/白、必要に応じて黒)を清潔な白背景に配置、スタジオ照明。全てのアイテムはフレーム内に完全に収まり、明確に見え、一つずつのみ配置されていること。

配置: 服は、平らな人間のシルエットを形成し、着用をシミュレートしなければならない。濃いネイビーブルーのコートと白のトップスは上半身に重ねて配置。黒のパンツは下に完全に伸ばす。左右対称のスニーカー(白/ボルドー)をパンツの底に配置。ボルドーのビーニーは頭部付近に。

アイテムリスト: 濃いネイビーブルーのオーバーコート、白のクルーネックトレーナー、黒のスリムフィットジーンズ、ボルドーのビーニー、ロートップスニーカー(白ベースにボルドーのアクセント)。黒のオーバーイヤー型ヘッドフォン、銀のチェーンネックレス。

衣装の画像です。これも権利関係をクリアするために Adobe Firefly を利用します。

自分で用意した洋服を撮影して利用した場合、どういう扱いになるのか。わかる方いらっしゃれば教えて下さい。

素材を変形・加工する

AIで加工することが認められている素材や、自分で撮影・作成した素材を変形・加工するパターン。権利関係の問題が発生しづらい。

背景の引き伸ばし

シンプルな背景の場合、Photoshop の生成塗りでも十分対応可能ですが、意図したものを表示したい場合は nano banana の方が計算しやすいと思います。

プロンプト

この料理の画像の上下左右を広げてください。

下に敷いている布や器の柄、色は維持してください

人物加工

素材となる写真は撮影し、権利をしっかりと確保したものを用意しましょう。

カメラマンによってどこまでやっていいか変わりますので、依頼時にしっかりとすり合わせ、確認をしておくとトラブルを防げます。

顔の向きや、目線、表情を変更できます。

プロンプト

男性をヒゲや髪型、人物像はそのまま、爽やかな笑顔に。歯は見えない。
清潔感あるイメージに。

プロンプト

男性をヒゲや髪型、人物像はそのまま、右を見つめてなにか物思いにふけっている感じに。

髪型や顔を調整します。体型や年齢も変化させて違う人物に。

インタビューなどの写真では無理ですが、イメージカットなどでクライアントの社員様や、当社スタッフをモデルとして撮影した場合、この形で人物を入れ替えて置けば急な退職や、契約の継続などで悩むことがなくなります。

プロンプト

男性の顔を優しい感じに。ヒゲをなくす。髪型はちゃんとしたサラリーマンのイメージに

プロンプト

男性の顔を優しい感じに。ヒゲをなくす。髪型はちゃんとしたサラリーマンのイメージに。年齢を10歳老けさせて、顔、体型ともにふっくらとさせる。

解像度・アップスケール

サイトリニューアル時に古い素材しかなく、解像度が・・・ということ結構ありますよね。

専用のツールやPhotoshopで加工をトライしていましたが、nano banana がかなり優秀です。こちらも権利をクリアした写真素材であれば問題なく利用できるのではないでしょうか。

イラスト展開

イラストレーターに依頼して書いてもらったキャラクター、ポーズや表情のバリエーションを一緒に依頼することが多いですが、プロンプト一発で展開可能です。

発注や契約の仕方を根本的に考え直す必要がありました。1点いくらではなく、1キャラクターいくらという形になっていくのでは無いかと思います。

ラインスタンプ量産できそうですね。

プロンプト

このイラストを元に、色々なポーズのポーズ集を作ってください

素材を組み合わせる

ポーズ変更

ポーズを指定する画像と組み合わせることで意図したポーズをとらせることができます。この2つの画像を Gemini で合成します。プロンプトはとてもシンプル。

 

プロンプト

男性を木のモデルの姿勢に

衣装変更

衣装を指定し着せ替えます。

実案件でクライアントの制服が変わった際に写真の撮り直しを避けることができました。この例ではAIで生成した衣装を着せていますが、実際に衣装を用意して撮影したものを利用しました。

影や質感などもポーズやライティングに合わせてくれるので違和感なく、問題ありませんでした。

プロンプト

男性に写真の衣装、小物を身に付けさせてください。ポーズや表情は変更無し。

よくばりセット

プロンプト

男性を木の人形のポーズを正確に再現して写真の衣装、小物を身につけさせてください。

表情を真面目な顔にして上を向ける。

自動化・チェック

画像検索

大量の画像の中から特定の条件に一致する画像を検索する仕組みを作っています。

ChatGPT / Gemini のAPIを利用して作成しています。

ロゴ検索

クライアントの企業ロゴが変更に。サイトには3,000枚以上の画像があり、ロゴが含まれている画像をすべて置換する必要がありました。

画像にロゴが含まれているかをAIに検知させたところ、ロゴの画像はもちろん、画像内の制服の胸についたロゴまで発見してくれました。

電話番号検索

電話番号の変更が必要な案件。テキストの検索は簡単にできましたが、一部画像になっている電話番号があるということがわかり、AIで電話番号が含まれている画像を検索する仕組みを用意し、検索しました。